本間普喜のホンマのところ… TOP > 2011年04月13日                    お気に入りに追加

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「底力」見せた嶋という男…

 「がんばろう東北」を掲げ、開幕戦を勝利で飾った楽天。選手会長の嶋が見せた「野球の底力」は奇跡を起こすかもしれない…。

ロッテ 4-6 楽天(4月12日、QVCマリン、観衆=22525人)

 12日に開幕したプロ野球。ロッテvs楽天戦が行われた千葉QVCマリンフィールドには、平日のデーゲームにもかかわらず2万2525人もの観客が詰めかけた。スタンドのあちらこちらには「がんばろう東北」「かんばろう日本」「魅せろ東北魂」などのメッセージが掲げられた。

 だが、昨年ロッテを日本一に導いたエース左腕、成瀬善久投手(25)は、ほぼ完璧に近い内容。六回まで許したヒットは3本だけだった。しかし、1-1の同点で迎えた七回、2死から岩村明憲内野手(32)、指名打者のランディ・ルイーズ(33)に連打を許して一、三塁。打席には8番打者の嶋基宏捕手(26)を迎えた。その初球、137キロのストレートが真ん中やや外よりの高めに浮いた。嶋のバットが芯をとらえると、打球は一直線にレフトスタンドへ。ベンチでは星野仙一監督(64)が「よっしゃぁぁぁぁあ!」と絶叫。チームを束ねる若き選手会長の一撃が、楽天に劇的な勝利をもたらした。

 試合後、星野監督(64)は、泣いた。「涙? それが普通じゃないの、ウン」。観戦した楽天の総帥、三木谷浩史球団会長(46)も「野球を見ていると、現実を忘れるというより、頭の中が楽しい思いになる。東北のみなさんもパブリックビューイングを見ていらっしゃると思います…」とまで話すと感極まって言葉を詰まらせ、嗚咽を漏らした。

 開幕戦といえども長いペナントレースの中での144分の1。だが、楽天にとっては特別な日だ。3月11日の東日本大震災発生当時、チームは兵庫県・明石にいた。「いつも自分たちを支えてくれたファンが苦しんでいる。一刻も早く駆けつけたい」と選手から声が挙がった。だが、手だてがない上に試合の日程も詰まっていて、他球団にも迷惑がかかる。そんなジレンマに苦しんだ。悩み抜いた末、嶋は意を決して星野監督の部屋をノックした。監督も要望を聞き入れ、7日のオリックスとの練習試合をキャンセルし、1泊2日での一時帰仙が実現した。

 選手は「今頃になって何しに来たんだ」となじられることも覚悟していた。しかし、選手にとってはどうしても必要な“けじめ”だった。被災地でナインを待っていたのは、笑顔。そして、「何もかも流され、楽しみは野球しかない。だから頑張って」という励ましの言葉だった。

 そして迎えた開幕。三木谷会長は、球場に直接応援に来られない被災者のために、宮城、福島両県の避難所計18カ所にテレビを設置した。試合後、嶋は「空振りでもしようがないと、直球だけ狙っていた。2死だったので、コースではなく球種を絞った。僕たちは東北のみなさんと一緒に戦っている。そんな気持ちが打球に乗ったと思います」と控えめに話したが、まさに、被災地への思いが乗り移った本塁打だった。

 試合後の会見で星野監督は「嶋の底力! それを見たね」と話した。テレビカメラが下がって新聞記者に囲まれると、「あのホームランが出た時点で、“嶋の底力”という言葉がおれの脳裏に浮かんで、インタビューではそう答えようと決めていたんだ。もう用意してたから、俺は」と明かしてニヤリとしてみせた。

 「底力」とは、2日に札幌ドームで行われた日本ハムとの慈善試合での嶋のスピーチに引っかけたものだ。その時のスピーチはこうだ。

 「あの大災害は本当だったのか…。今でも信じられません。僕たちの本拠地でもあり、住んでいる仙台、東北が今回の地震、津波で大きな被害を受けました。地震が起きた時、僕たちは兵庫県で試合をしていました。家がある仙台には、まだ、一回も帰れず、横浜、名古屋、神戸、博多、そして、この札幌など、全国各地を転々としています。先日、神戸で募金活動をした時に、『前は私たちが助けられたから、今回は私たちが助ける』と声をかけてくださいました。今、日本中が東北、そして震災を受けた方々を応援し、全力で支え合おうとしています。震災を受けてから、眠れない日々が続きましたが、選手達みんなで、『自分達には何ができるのか?』、『自分達は何をしたらいいか?』を話し合い、考え抜いてきました。今、スポーツの域を超えて野球の真価が問われていると思います。見せましょう、野球の底力を。見せましょう、野球選手の底力を。見せましょう、野球ファンの底力を。共に頑張ろう、東北! 支え合おうニッポン! 僕たちも野球の底力を信じて、精一杯プレーします。被災地への支援、よろしくお願いします」


 星野監督をも涙ぐませた名スピーチだが、本来、嶋は饒舌なタイプではない。性格は実直で控えめ。野村克也元監督の時は、いつも怒られ役だった。野村元監督の説教を直立不動で聞き、それをリードに生かしてきた。今年2月の久米島キャンプで、星野監督が初めてカミナリを落とした相手も嶋だった。実戦形式での練習中、飛び出した三塁走者を刺そうとしたが、嶋は打者の体がじゃまになって送球を躊躇した。公式戦なら打者を突き飛ばしてでも送球するところだが、チームメートとあってためらったのだ。これに対して星野監督は「あんなもん、突き飛ばせ!」と激怒した。

 良く言えば、優しい、思いやりのある男だが、それが嶋の甘さでもあった。強引にチームを引っ張っていくようなタイプでもない。中学、高校では野球部の主将も務めているが、昨年オフに楽天の選手会長を引き受けた際も、当初は「とても務まるとは思えない」と弱気だった。結局、周囲から「お前しかいない」と推され、「みんなに助けてもらえるなら…」と引き受けた。それが、震災を機に、嶋の中で何かが変わったようだ。

 精神的なショックもあり、一つ間違えればバラバラになりかねないチームをまとめ上げた。震災後の対応を巡っては、首脳陣と何度も話し合った。そして、「見せましょう、野球の底力を」の言葉でナインを奮い立たせた。

 この日の試合前、選手宿舎で星野監督は、こう選手を鼓舞している。「被災地を訪れて、君たちの優しさや思いやりは東北の人たちに受け入れられたはずだ。今度は強さを見せよう」。

 その言葉通り、嶋は優しさ、思いやりに加え、強さを身に付けた。そんな嶋が引っ張る楽天。チームが一丸となって「底力」を発揮すれば、奇跡を起こせるかもしれない。



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[ 2011/04/13 09:46 ] スポーツ プロ野球 | TB(0) | CM(0)
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プロフィル

I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes...or should I?

Author: 本間 普喜
(ほんま ひろき)

1963年5月7日、横浜生まれ
1987年、産経新聞社入社
職業:ライター
好きな食べ物:極上の本マグロ、アルコール類全般…
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